バハは私たち日本人からすると、「半島」という言葉がピンと来ないほど巨大だ。
アメリカに接する最北端のティファナから最南端のリゾート地、カボ・サン・ルーカスまで、直線距離で約1,300キロ、国道1号線を使っても1,600キロ以上の道のりがある。これは日本の本州やアメリカのカリフォルニア州とほぼ同じ長さだ。半島南部のラパスまでは数回行ったが、車で普通に走れば行くだけで丸2日間、バイクでツーリングすると数日かかる。
これだけでっかい土地に日本の人口の約40分の1、300万人そこそこしか住んでなく、しかも8割近い人がアメリカ国境沿いの街に集まってるもんだから、他の地域のほとんどは原野か農地だ。誰かは人の数よりサボテンの方が多いって言ってたなぁ。その割にはどんな山奥に行ってもメキシコ人がひょこっと出てくるのは不思議だけど(笑)。
日本人がバハに行くと、まず第一印象は「アジアの国みたい!」ってのが多いようだ。ティファナやエンセナダの中心地を除いては、綺麗とは言えない埃っぽい建物が並び、貧しそうな家も結構ある。ピカピカのアメリカから陸路で入るとその落差がより顕著にわかる。その景色は妙に何だか懐かしい。
延々と広がる大陸的な景色、とっても気さくなメキシコ人、案外日本人の口に合う料理、スペイン的な作りの小さな町、そして変化に富んで飽きる事の無い「道」など、バハにある魅力的なものはいろいろ尽きない。しかしこれら全ての魅力的なものの中に身を置く事によって、滞在中に常に感じていられる独特な「自由な感覚」こそが実はバハの最大の魅力だと思っている。
バハは大陸ではなくて半島なんだけど、あまりに大きなサイズのため、景色はどこへ行っても大陸的だ。特に半島中部から南部にかけて、サボテンがこれでもか!と生えている原野は、我々の日常持ってるサイズや数の世界をブッ飛ばす程の圧倒的な迫力がある。だだっ広くまっ平らなドライレークや、南北に延々と続く美しい海岸線など、何から何までいちいちスケールがデカい。
一方そんな景色の中を旅していると、所々で地元の小さな町が現れる。サイズは小さいが、それぞれの町の中心には必ず教会と広場があり、そこを中心にレンガやオレンジの土壁で作られた建物が広がる構造は、スペイン文化から来たものだ。たまに見かける子供の壁の落書きさえ、アートを感じてしまうのはなぜだろう・・・。
バハで出会う人々の多くは素朴で気さくだ。ガソリンスタンドで働く姉ちゃんから、ホテルの受付の兄ちゃん、タコススタンドのおじさんや、雑貨屋で店番してるおばさんまで、会えばいろいろな人がひょいと話しかけてくる。彼らは南米の国々の人のようには底ぬけて明るい感じはしないし、経済的にも大変な人も多いのだろうけど、我々から見るといつも楽しく生活してるように見える。
基本的に親切な人が多いらしく、道を尋ねるとみんな喜んで教えてくれる。たまに知らない道でもさぞ知ってるように教えてくれるのはご愛嬌だが(笑)。
またレースの影響でバハの子供にとってライダーはある種のヒーローらしく、道端でバイクを止めるとどこからどもなく子供達がやってきて、「ステカ、ステカ」とステッカーをせがまれる。働く子供が多いのも特徴だろう。店番をしたり道で小物を売り歩く子供には、関心するとともにそうせざるを得ない環境に複雑な思いにもなる。
そんな人々に接してふといろいろな事を考えるのも、旅をすることの一部なんだろう。
バハの原野を走る道はオフロードがほとんどで、オフ車に乗る連中にとってはパラダイスと言える。
基本的には乾燥した砂漠で、白く細かい砂はもちろん、締まった土や尖った岩などいろいろな路面が現れる。山奥に入ればサミットと呼ばれるガレた峠もあるし、洗濯板のような路面を延々と走らされるところもある。一旦雨が降れば日本以上のヌルヌタに苦しむ場所もある。
そうかと思えば海岸沿いの気持ちいいワインディングや、広大な景色の中をアップダウンする丘や、スロットル全開で走れる長~い直線など、道の多彩さにはほんと飽きる事が無い。
難易度はルートによっていろいろで、どのレベルでも楽しめる場所がある。さすがにオフ初心者の人にはバハはお薦めできないけど、地元で普通に気持ち良く林道を走れるくらいの人なら、バハを走った経験がある人と一緒に十分楽しめるよ。